木遣り・鳶 石津弘之さん
生まれも育ちも築地の私。
波除稲荷神社、通称「なみよけさん」の6月のお祭りでは、お神輿は担がない訳にいかないというくらい祭りが好き。
神社から波除さんのお神輿が出る前に、「木遣り(きやり)」といういかにも江戸っぽい素敵な歌声?がするんです。
素敵なおじ様たち、いつも話しかけたくても話しかけられない・・・。(モジモジ)
でも、町会のお疲れ様会(鉢洗い、というそうです)で、この粋でいなせな格好のお二人を発見!
今インタビューしなくていつする?!今でしょう!ということで、飲み会で気持ちよく酔っぱらっているとこを突撃取材させていただきました!(すみません、汗)
目次

木遣りも気になっていたのですが、実は、祭りの前にこの神酒所(みきしょ:町会の神輿の置いてあるところ)の小屋も作って下っているのは、この方たちと聞きました。
なおさらら今話聞かないと!ということですよね。

「神酒所(みきしょ)を作れる技術を持つ人」が少なくなってきていると聞いたのですが。
我々は「江戸消防記念会」(下記YouTube)というのがあるんですけれど、お祭りの時は作ります。
でも、築地みたいに全町会でお宮を作るのは珍しいです。
(既存の建物を利用したりすることが多いそうです)
2~3年前から藤沢から来て手伝っています。
今まで当たり前のように見ていましたが、造作を見たら、すごい手が込んでいる。

木遣り(きやり)は誰に教わる?
口伝(くでん)なんですよ、文章に書いてないから。
音符がないから。
我々の場合は、月に2回くらい「木遣りの練習の集まり」があります。
どこで練習するんですか?
その時によって違うけど、今は新川で。
秋葉原の方とか、人形町の方とか。
2行くらいの文章を7分くらいかけて謡うんです。
江戸が発祥なので「江戸の木遣り」なんですけれど、自分は藤沢で東海道7番目の宿なので、口伝だからちょっと違いますよ。
似ているんですか?
もちろん文句は一緒です、歌も一緒です。
ただ音程が違いますね。
伝言ゲームと一緒で、東京で「ア」と言ったら、藤沢まで来たら「オ」とか「カ」と変わっちゃいますよね。(笑)
木遣りって、職業によって違うんですよ。
木遣りっていうくらいだから、「木を切り出す時の木遣り」「木を運ぶときの木遣り」「木の形を作る時の木遣り」。
我々やっているのは「地形(じぎょう)木遣り」といって「建物を建てるための木遣り」なんです。
今はコンクリートで基礎を作るけど、昔は大きな石を叩いて、そこに土台を作った。
みんなで叩くために、みんなで声を合わせて、ドンドン石を突くんです。
4つの角は、大間(おおま)といって間を大きくすると、高いところから落とす。
中間(ちゅうま)とって、間の柱の時は高く上げないから短い木遣り。
石の場所によって木遣りの長さが違うんですね!
木遣りも色んなバージョンがあるんですね!
でも基本的な歌はあまり変わらないですけど、地方によって違う文章があるの。
東海道だったら、似たり寄ったりですかね。
藤沢の人は、俺らの先輩が東京の人に教えに来てもらって。
竹森金太郎さんって有名な人がいたの。
我々の原型は、竹本さんです。
それが、小唄端唄になって・・・木遣りのお師匠さんはあまり人数いない。
私は、築地出身なので、途絶えてほしくないと思います。
神田は続きそうですけど、龍角散がらみで。
今イベント用に、やっている木遣りもあるんですよ。
神田の龍角散の豊島町の町内でやっているんですね。
みんなかっこいいと思ってるけど、なかなか話を聞ける機会がないと思って。
職業によって・・・相撲でも相撲甚句、木遣りは地形(じぎょう)木遣りというのがある。
これも口伝で聞いた話なので、正しいと思っているけど、学者さんなんかに言わせると違うだろ、ということもあると思います。
月2回練習とのことですが、何人くらいで練習しているんですか?
練習には、お偉いさんは出てこないですが(笑)割と若手にやってもらってます。
若手の人がいるというのを聞いて安心しました。
基本若手がやってます。
うちの息子が、師匠になりつつあるんです。
俺も声でなくなってきたから。
50人くらいでやったんですけど、
うちは「す組」です。
10番まである。
1区から11区の中に1~10組がある。
何区何町、みたいな感じで。
調べている人がいて、昔の江戸は用水堀に関所があって、5時半すぎると女の人は入れない・・・暮れ六つ、4時半と5時半なんですよ。
江戸時代にタイムスリップしたような気分です・・・。♥
昔は、木遣りが歌えないと仕事が出来なかった。
手を放すタイミングが分かんない、全員がロープでつながっている、ぱっと話した瞬間にドンと落ちる。
四つ角とか大黒柱のところには、大きい石を置いてドンドン打つからすごく高く上げるから「大場(おおば)」という木遣りをやる
真ん中は、「中場(ちゅうば)」という短い木遣りをやる。
それによって調子が違う。
善光寺で最近イベントとしてやってましたね。
昔の人と一緒で、俺も東京の仕事を勉強しにきています。
東京のお祭りを教えてもらいに来ています。
藤沢の祭りは、神輿が出るんですか?
神輿と山車が出ます。
もともとは山車のお祭りだったみたいです、うちの神輿も150年前くらいの神輿ですけど。
18町内あるけど、もう山車は2個しか残ってないです。
中央区は割といろんなところに仕舞ってくれるから、残っているね。
宮本の神輿も仕舞えるし、勝鬨も纏が仕舞えるところがあるし。
中央区千代田区港区、税収があるからね。
いつも「かっこいいな」と思っていた人にインタビューが出来て、満足です!
6番組の組頭ですから。
関東大震災後二番組にあった魚河岸は、六番組(す組)の持場である築地に移転した。
出典:http://www.edosyoubou.jp/first.html

出典:https://www.tfd.metro.tokyo.lg.jp/learning/elib/qa/qa_03.html
6番組が「す組」なんですか?
「い」からはじまるので、
築地は字の通り、築いた土地だから、いちばん最後の方なんです。
いろはにほへとちりぬるをわかよたれそつねに・・・。(あと覚えていなかったので、下記に記します)
いろはにほへと
ちりぬるを
わかよたれそ
つねならむ
うゐのおくやま
けふこえて
あさきゆめみし
えゐもせす
「い」からはじまる・・・「い組」は江戸城の真下の日本橋や京橋、「ろ組」は八重洲、「は組」は人形町。
築地は字の通り、築いた土地だから、いちばん最後の方なんです。
埋め立て用と思って、波があって埋めたてられなかったら、波除神社を作ったら、波が立たなくなった、ということですもんね。
江戸は湿地帯だったので、日比谷と神田のお山を崩して埋め立てたんですね。
例の有名な太田道灌が、ね。
生き字引ですね。
頭(かしら)が「じぶんのとこのことは覚えとけよ」と授業があったんですよ、月に1回。
でも、だいたい長すぎてみんな眠くなっちゃう。(笑)
わかるわかる。
でも興味あるから面白い時もあった。
築地出身なので興味あります。
昔は興味なかったんですけど、自分が築地じゃないところに引っ越して「下町出身でしょ?」と言われて。
今まで当たり前だったことが当たり前じゃないということに気が付いて。
江戸の飛び地が佃で、隅田川の向こうは江戸じゃなかった。
昔は、墨田川はこっちは漢字で、向こうはひらがな。
へ~~~!
橋は「表」は漢字だけど、「裏」はひらがな。
日本橋起点で、品川までは江戸、甲州街道は新宿、むかしは「にいじゅく」までが江戸です。
小学校で話してほしい。
本当によくご存じで。
神官(しんかん)の頭に「こういうの残せ」って言われて教えられたんですよ。
結構いい加減に言っちゃうみたいだけどね。(笑)
いんですよ、口伝だから。
木遣りで言ってる内容は?
お祝いの言葉ですね。
覚えてないよ、やると何となく分かっているから。
ヘンな話、慣れちゃってるから。
”御用目立たの若松様よ、枝も栄えて葉も茂る”
という言葉です。
藤沢では、「松坂」は葬儀の時にやるんです、東京はどうなんですか?
両方やりますよ。
こないだの波除神社の宮出しのときは、宮出し用の江戸城に入る木遣り・・・昔江戸城に入れたのは、神田明神と赤坂日枝だけ。
本来は江戸二大祭り、日本人は、3とか7が好きだから、三大祭りと言っているけど・・・それぞれが俺のとこだ俺のとこだと言ってるけど。(笑)
じゃあ、木遣りの中身はおめでたいことですね。
「五万石(ごまんごく)」やりますよ。
五万石、俺、やったことないです。
ノットやって、手古(テコ)やって・・・我々のところで一番多いのは田唄(タウタ)です。
たうた?
田唄(タウタ)は冠婚葬祭、全部使えるんです。
名前が「さらば」だから、仏でもできる、タウタの後にサラバというという形が江戸では多いです。
サラバだから、これで終わりますよ、ということ。
我々、田唄やったことないですね。
我々圧倒的に田唄(タウタ)が多い、お祝いの時も使えるし葬式でも使えるし。
葬式でやるって、はじめてききました。
松坂の方が多いかな。
松坂超えて明星の腰に・・・という、東京とは少しずつ違うみたいです。
たまにお師匠さんが難しいのやると、ついていけないの。(笑)
一回見学しに行こうかな・・・お祭りになると血が騒ぐし、築地に住んでいなくても、みんな戻って来るし、担がないと気が済まないし。
そうやって戻ってくるのがすごいですね。
そして、築地の夜は更けていきました・・・。
関連リンク
参考にさせていただきました!ありがとうございます!
木遣りの説明がされています。
つきじ獅子祭り〜東京〜
NHKの音声アーカイブ。3分10秒あたりから木遣りが聴けます。
江戸の神輿と町火消の伝統
中央区の観光特派員さんのブログ。
私が撮っておきたかった、電通脇の江戸の町火消の画像が載ってます。
歌舞伎座でも木遣りを正月にやっている!
同じく歌舞伎座での木遣りの様子。
東京都の無形文化財のPDF。
江戸時代、どの場所がどの組だったかが記載されている東京消防庁のページです。
8分30秒くらいから、三越で木遣りをやっているのを見ることが出来ます。
しかも、石津さん、センターの左後ろにいるのを発見!
新年の三越で、木遣りをしていたのね!カッコイイ!
下記YouTubeは、木遣りのひらがな表記があって、非常にありがたい。
こちら、神田明神と日枝神社が特別な神社だと分かる、説明もあります!
取材後記
後記みたいなことを先に書いちゃってますが。(笑)
お2人の言葉遣いに、「ホーム感」しかないんですよ。
普段、ライターという商売柄、読みやすいように言い回しを直すんですけど、同じ穴の狢、同じ文化圏の言葉だ!と。
これほどホッとするものがあるでしょうか!(おばちゃんの主張)
東京にもお国言葉があるということを、改めて認識したインタビューでした。
そして、こちら、ぜひご覧になってください。
1人じゃどうにもならない時、神を感じる・・・だから冠婚葬祭で木遣りをやるんだと。
そして中に出てくる方の言葉遣いも、親近感しかないです!笑